准喫茶あいんざっつ オカダジュンイチ見聞録
BLUE PLANET 後半
次は「水と持続可能な開発」をテーマにした
万博が行われるサラゴサの街へ。
バルセロナからAVEで2時間、内陸にある街。

■Zaragoza
准:万博、あと2ヶ月。間に合うのかなぁって思って
しまうぐらいの工事現場です(笑)
これ2ヶ月間に合わないでしょうに。でも
間に合わせちゃうんだろうなきっとヨーロッパの人は。
砂だらけですね。今車で回ってまーす。

准:Encantado de conocerle. Hola!
(はじめまして。こんにちは!)
なんでサラゴサが水の万博の開催地に選ばれたんですか。

5つの川がサラゴサにある。沢山川が流れている
のに街がすごく乾燥している。そういった理由で
常に水をどう利用し、保って行ったらいいか、
というのがテーマだったのが理由のひとつ。

准:水をテーマにした万博は大事なテーマだと思いますが
スペインが世界に誇れる水の技術ってありますか。

沢山ある。というのはスペインは昔からその必要性が
あったのでパイオニアだと思う。海水を飲料水に変える
技術など。

准:水をとても大切にして生きているんですね。

私達は水を大事に思ってないからこそこうなってしまった。
これからは常に水を大事にと思う感覚を呼び戻すことが必要。
生きる為に必要な資源である水を、もう一度原点に戻って
考える時だと思う。

准:6月の万博の成功を祈っていますし、日本からも
沢山の人が行くと思うので優しくして下さい。
Gracias!

■BALCERONA
サグラダ・ファミリア。
着工から120年経った今でもなお、建築が続けられている。

准:おぉー!すごいなぁー!一生に一度は
サグラダ・ファミリアを見たいと思っていて、
生で見れたんですけど。圧倒的な存在感と細かさと
ユニークさと。

サグラダ・ファミリアの主任彫刻家、外尾悦郎さんと対面。
准:まだ作られていない部分もあるじゃないですか、
その部分は何を頼りに作られているんですか?

外:いやー、初めて御覧になったのにすごい質問が
しょっぱなから。それが一番の私のテーマなんですね。
十数年経って、ガウディの資料がこれ以上見つからないと
いうのがはっきりしたときに、どうするか。やっぱり
目を外すでしょ?目を外した時に、じゃあどこを見るんだ
と思った時に、ガウディが見ている方向があるはずだ、と。

そっちの方を見てみよう、と思った瞬間にガウディが私の
中に入った気がした。私がガウディの中に入った気がした。
でもそれは、偉大なガウディが人間として生きていたその人と
心がひとつになる、つまり岡田さんと今同じ方向をもし向けた
としたら心がひとつになるわけですね。

今までガウディの意思に従わなければいけない、
ガウディの資料を完璧にマスターしなければならないと、
自分に果たしていた義務がふっと解けて、ああ何でも
できるんだと思った時に、色んなアイディアがでてきた。

たとえば、後ろにある4.5mの雨樋のデザインですけどね、
4人の福音書家の塔が建たないと真ん中のイエスの170mの塔が
建たないわけですね。雨樋を彫ってくれ、と大きさは4.5mとしか
書いていない。その後は私が考えなければならない。

准:デザインはどこにも書いていないわけですね?

外:どこにも書いていない。というのはガウディは
指示すらしていない、新しい部分ですからね。
聖書を読み比べてみると、ヨハネの塔のヨハネという人は
唯一黙示録を書いているんですね、その黙示録の最初の
ほうに、7つの教会へ7つの本を贈れ、と。
2000年前というのは製本はなくて一枚の紙ですね、パピルスとか。
ローマ時代の大事な歴史文書は書いたところまでロウで封印して、
書き直せないようにしていた。今とは違うシステムだったことが
わかる。だとすれば、ヨハネが書いた7つの教会へ送った手紙とは
巻き物ではないかと。7つの巻き物を用意し、それが開き始め、
真ん中から雨水が落ち、真ん中の一番下の筒から雨水が流れ出る。
つまり、雨樋です。

准:7つの巻き物が重なったデザインになってるんですね。
ガウディの建築ってもう全然今のルールにはあてはまってないから
混乱をされたとは思うんですよ。直線じゃないものにしても
実はねじったらそれが全部理にかなっている建築をする、
というふうに言われているけれど、普通は直線がないのは・・・
色んなこと言われるじゃないですか。

外:建築というのは引力に逆らって建っているものですね。
無理なことをやっているのはばかばかしい、引力に逆らわない形の
建築ができないかとガウディは素直に考えてしまった。建物の
平面図を天井に貼って、天井から糸を垂らして、引力の形の通りに
石を積んで行ったらどうだろうかと、それが大成功だったんです。
つまり、どんな高いところに置いた石も引力がしっかりと
その方向に引っ張ってくれている。最大の接着剤です。
どんなセメントよりも。しかも最大のエネルギーをタダで使わせて
もらってる、理想の建築です。

今世界中からガウディの話を聴きたいという人達がくる。それは
建築だけの興味ではないんですね、今岡田さんが考えていたように
ガウディが何を求めていたんだろう、とそれが明解に答えが出せれば、
今現代の世界中の人達のどんなに役立つだろうと、
実は私は密かに楽しみにしているんです。そのヒントが必ずある。


准:僕達は楽を手に入れるかわりに置いてきたものが沢山あって
それがガウディの教えであもあるし、僕達今回水を探しに
来ていて、今回のテーマが「水」なんです。
水も象徴的なもので、人間が楽を手に入れるかわりに
汚してきていて、それを売り買いする。
この場所で水というのはどういう存在になっていますか。

外:建築というのは雨風を避けるということですね、
雨の下ではミサはできないわけですから。
1ヘクタールの土地に降る雨を、膨大な力を持った水をどうやって
うまく流していくか。具体的な問題として、バルセロナは柔らかい
傾斜地なんですね。地下は一万年前はイベリア半島というのが
チデニードという大陸が沈んだおかげで代わりに浮き出て来た
土地なんです、だから全部砂なんです。そこを山から流れてくる
地下水がどんどん流れている。その上にサグラダファミリアは
建っている。長い何万年の歴史の中で固い部分が表層にできてきて、
それを数十メートルでしょうか、ガウディが知って知らずか
たまたまその上に建てている。

地下は低い天井でアーチ型になっている。
卵の殻を半分にしたようなものがいくつも並んでいて
実は地下を掘り込んで行くとその柱にも逆アーチが建っていて、
卵の殻はとても薄いのに強いんですね。ガウディは深く掘らなくても
強い地下の構造体を作っていたんです。ところが今度、この真下を
高速列車を通す計画があって、山からの水の流れを防ぐ為に
40mの壁を作ってしまおうと。
水の力はものすごいものだということを知っているのか知らないのか。
強い壁を作れば作るほど、あんなに優しいどんな形にも変わっていく
水なのに、ものすごい力で壊していくでしょう?

ですから、ガウディは水に逆らわない建物をちゃんと作っていた。
水がうまく流れて外にいくよう考えていた。
ガウディが作ろうとしたサグラダ・ファミリアとは人類の平和とか
未来へ託した夢とか希望とか、多くの良きものが
組み合わさってできている。

自然とは最初から謙虚ですよ、しかも勇気がある。
そういったこともふまえて、人間が対抗しないようにね、
自然の力を利用して、どうしてうまく水の流れを利用できないのか。
ガウディの言葉で「オリジナリティとはorigin(原初)に戻ること」
水の解決もorigin、原初に戻ること、ですね。

准:ありがとうございます。

■STUDIO
サグラダ・ファミリアについて
准:オペラが聴こえてきそうな感じでしたね。
光と芸術と。そこにただいて光り輝いているという感じですかね。
本当にいうと30%か40%しかできていないんですね。
この30年くらいでできるとは言われてはいるんですけど。
それにしても自分が生きている間にできるとは思っていなかった
はずなんです、ガウディは。生を見た時に一番思ったのは、
これはできてはいけないものなんだ、と
思いました。外尾さんには申し訳ないですけど。
これはやっぱり象徴とするもの、作っている今もなお、
模索して作り上げていこうとしている、ということに
価値があるんだなぁと思ったし。

水は色んな形になるし、流れを変えない、と外尾さんは
おっしゃっていましたが、でも流れを変えることによって
人類は水害を起こらなくしたり、治水をしてきたけれども、
本当の水を汚してきてしまった。
「もっと良くしたいと思うこと」をずっとやめないで思うこと、
ガウディの自然との融合とをはかりたい建物、それが
ガウディ建築なので、ガウディの投げかけを受け取ってどうするか
ってことを「考える」ということが大事なのかなぁと思った。

サラゴサの万博にしてもスペインの人は水を選んだ。
水不足がものすごいことになっているので
みんな本当に大事にしなきゃいけない。世界中でも
地球温暖化によって水不足になっているとは思うんですけど。
身近にありすぎて蛇口をひねればでてくる自分たちの感覚が
あるから、日本ではそういう話は聞かなかったから・・・

水に関して旅の前後でどう変わったか。
准:自分自身は汚染しないようにしないとな、とすごく
思いましたね。味がなくなってしまったといわれると、
大事な事の中の1つがない、このまま味を悪くしていくのも
いやだし、自分自身が悪くしたと世代的に言われたくない。
この100年、建築とかは進歩しているのにあの時代が悪くしたよね
とは言われたくないし、たぶんここ100年だと思うんです。
水の味が変わったと言われるのも。

ガウディの自然との融合、当たり前にあると思ってたものを
見つめ直す、それは家族だったり、色んなものを見つめ直す
良いきっかけになった旅でした。探しながら感じたいですね。
ぜひまたお願いします。ありがとうございました。

■■■
というわけで、BLUE PLANET後半でした。
おそらく准喫茶史上、最も長文の記事になってしまった。
ここからはcocoaの感想を。

ついつい、熱くなって外尾さんのお話を文字起こし。
超恥ずかしい過去を告白をすると、私は大学時代に
外尾さんに一目お会いしたくてサグラダ・ファミリアへ行き、
お会いできなかったという思い出があるのです。
若気の至りで、現地に行って探せば会えるだろうと
アポ無し突撃、見事玉砕(笑)今考えると無謀すぎ
(むしろ突撃なんかしてご迷惑をかけなくて良かった、冷汗)

でも、夢の仕事場、工房を見れただけで感激でした。
目の前で石が彫られ、クレーンで石像が吊り上げられていく。
歴史が積み重ねられる瞬間に立ち会っているような、
壮大な時の流れと人間の一生の短さ、その血流の中で
受け継がれ磨かれてきた叡智を感じる空間でした。
ものすごく濃く深い想いがただよっている。
ガウディの、彫刻家達の、そして訪問者達の。

きっかけは作家森瑶子さんの本。
日本人の彫刻家がガウディの遺志を引き継いで建築に
取り組んでいると知ってとにかく感動したんですね。
でも今や外尾さんは、建築好きな方なら知らない人は
いないであろう有名人。こうして、取材として正式に
直接お話や解説を聞ける准くんがとても羨ましいです。

ガウディが天井から糸を吊るして・・・というお話が
ありましたけれども、その模型が教会の中にあって。
普通の教会建築では塔の先に向かって直線的に鋭角になりますが
ガウディの天に伸びる4つの塔の部分は尖っていないんですね。
コーンのように丸みを帯びた形。それは糸をたらした時に
できる放物線の、なだらかなラインを逆さまにしたもの。
天井に向かって伸びる柱も、植物からインスピレーションを
得ていたり。そういう意匠のひとつずつに感激して4つの塔
(中で順につながっている)の螺旋階段を全て歩いてのぼりました。

観光用のエレベーターもあったけれど、そんなの乗ってる
場合じゃない、という気分だった。自分の足でぜぃぜぃ
息をきらしながら、手足で石に触れながら登りたかった。
そうしなきゃガウディの描いた世界に近づけない気がした。
材料は石のはずなのに、この今にも動き出しそうな生命感と
ぬくもりの秘密は何なのだろう、と。

そしてささやかながらの募金をして、ゲストブックにサインをして。
本当に数mmの足しにもならないかもしれないけれど、自分も
ガウディの遺志のために何かしたい、と強く思った。
自分の募金が、この建築の一部になるとしたらすごい夢があるなぁと。
で、「生まれ変わったらまたサグラダ・ファミリアに来たい」
と記帳しました。もしかしたら生きているうちに一応の完成は見れる
かもしれないけれど。石は生きている、建物を生かし続ける以上、
完成はないのだ、と外尾さんもおっしゃっているので。

だから、番組の最後に准くんが「これはできてはいけないものなんだ」
とサグラダ・ファミリアが未完成であることの意義について
話していましたけれども、外尾さんがこの感想を聴いたら
きっと申し訳ないどころか、喜ばれると思います。
それこそが、外尾さんが生涯をかけて取り組んできた
このライフワークに込めている想いだと思うので。
独自の豊かな感受性と観察眼をもつ准くんだからこそ、
あの地で「ガウディの心」を通して未来を見つめることが
できたのではないでしょうか。

私のバルセロナ滞在では、興奮さめやらず、グエル公園、グエル邸、
カーサミラなどガウディ建築を徒歩で(建築バカ!)見て回りました。
グエル邸は中も見学して、馬車のために作られたカーブを描く石畳
(なんと家の中なのに)やアイアンワークに感動。
アイアンワークは、一見は鉄の飾りなのに、実は中身はパイプに
なっていてガスが通っている。なんともお洒落なガス管なんですね。
そんな機能性と工芸の融合に心奪われました。

まぁ、そんな私の珍道中の話はキリがないのでいいとして、
准くんの旅番組をいつか映像付きで観てみたいです。
録音と雑誌のために海外ロケということのほうが
贅沢なんだろうとは思うんですが、准くんの視線の先にある
世界を映像で一緒に観れたらファンとしては楽しいだろうなぁと
思います。

と同時に、准くんがリスナーのために、できるだけ言葉で
説明しようとしている心遣いが伝わってきて・・・
准くんの素直な感動やリアクションがすごく好きです。
質問の切り込み方も、易しく鋭く核心を突いていて。
現地の方とのお話の中でも、准くんの心がぐっと動く瞬間
っていうのがラジオの向こう側からもわかるんですよね。
特に外尾さんの解説にあったガウディの「建築と自然との融合」
という考え方には深く感銘を受けて共感していたように思えました。

これからCasa BRUTUSで写真つきの記事も公開されると
思いますが、そちらも楽しみですね。改めて
「旅人・岡田准一」のファンになってしまいそうな
素敵な番組でした。

この記事へのコメント
1892. onco   URL  2008/05/10 12:55 [ 編集 ]
レポ、お疲れさまでした!
そして、ありがとう。。
私もその昔バルセロナに行きました。
ちょうどオリンピックのある年でしたが、
スタジアムが出来てなくて
これじゃ、間に合わないよ〜っ!
と思った覚えがあった事を
思い出しました(笑)
バルセロナは大好きな街です。
岡田くんがどう感じたのか
気になっていたので
cocoaレポは
とても嬉しかったです!

1893. cocoa   URL  2008/05/10 19:32 [ 編集 ]
>oncoさん
長文におつきあい下さって本当に、
どうもありがとうございました。
ダイジェストを作ろうとしたら外尾氏&准くん
の対談が嬉しすぎて長くなってしまいました。

オリンピックなのに〜スタジアムができてないって
面白い(笑)さすがはシエスタの国ですね!
そういうゆったりした価値観だからこそ、ああいう
途方もなく壮大な建物とか町並みができるのかなぁ。
旧市街のあるヨーロッパの街が好きなんですけど
中でもバルセロナの旧市街は迷路みたいで大好きです。
いつかまた行ってみたいですね。
1896. masa   URL  2008/05/12 02:01 [ 編集 ]
cocoaさん。レポ、おつかれさまでしたー。
番組自体も聞きごたえありましたけど、文字に起こしてくださるとはしばしで
「え?ワタシ聞き逃してる!聞きなおさなきゃ!」とかってところがあって、
本当に読み応えのあるレポでした。うれしかったです。

わたしもガウディの建築が大好きで、数年前になりますがバルセロナに赴き、
cocoaさんと同じようにガウディ建築めぐりしましたよー^^
中でもグエル邸は大好き!なんせバルセロナでの宿泊は、グエル邸の目の前
にある「ホテル・ガウディ」でしたから。笑。ミーハーなんです。フフ。
サグラダファミリアへも歩いて登りましたよー。あの左右の塔を結ぶ屋外の通路
で空を見上げたらク〜ラクラしちゃって(笑)そんなことも良い思い出です。

岡田くんの「これはできてはいけないものなんだ」発言には正直度肝を
抜かれましたが(笑)私自身そういった視点で見たことがなかったので、
改めてそういう視点であの建造物を見直してみたいなーと思いました。
感想長くなっちゃいましたが。レポ、嬉しかったです^^
1901. cocoa   URL  2008/05/12 12:04 [ 編集 ]
>masaさん
いつもありがとうございます!
レポまで読んで下さったんですね!
レポにする予定なかったんですけど書いてるうちに
結局レポになってしまいました。

サグラダファミリアの階段って340段位あるらしいです。
さらにそこから塔を4本上り下りしたら、いったい
何段歩くやら!でもあの螺旋は不思議な空間で
登る甲斐がありますよね。
「できてはいけない」発言は極端ですが、岡田くん
らしい言い回しだな、と思いました。未完であることの
美しさとか、ガウディが存命中に完成を見れないと
知っていて着手した意味とか、未来への存続の意義を
言いたかったんじゃないかなと思います。

現に外尾氏は石材での建築からコンクリート工法に
変えるよう政府に要請され、それならこの仕事を降りる、
とまで言ったことがあるそうです。結果、外尾氏の主張が
通って従来通りの石の建築で存続しています。そういう
賢人の想いみたいなものを、准くんは直感で感じ取った
んじゃないかな、と。ほんとに准くんはおそるべき人
ですよね。知れば知る程、はまります(笑)
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